朝日新聞の土曜版にこのような記事がありました。
なるほど・・・日々、魂の生まれ変わりですとか、前世療法などに関わっている私にとっては、すべての魂に前世があるのは当たり前の常識のようになってしまっているのですが、一般の常識人の方々の中では、生まれ変わりを信じる方々は、新聞のアンケート統計によると3割くらいのようです。
反対のカルチャーショックでもあります。
「晩年にインドで、占師に大金を払って前世を尋ねた作家の遠藤周作は、「腰を矢で射られて死んだハト」と告げられました。「だから、いまでも腰が時々、痛むだろう」と。来世を問うと「鹿です」。どちらも人ではなかった老作家は「くそォー」と歯がみしたそうです。魂は不滅。しかし、永遠に人の姿形を保てる保証はありませhttp://www.asahicom.jp/images/asahicom/hand.pngん。それでも生まれ変わりを願う人はいるようです。
■転生するなら愛する人と
すでに結婚もしている三十路(みそじ)のサラリーマンの息子に、変わり者と思われる要素は、ひとかけらもない。
わが子をそう評する関東の主婦(58)はしかし、彼が4歳のとき発した言葉を忘れられないでいる。それまで夢想したこともなかった生まれ変わり(転生)の実在をほのめかしていたからだ。
「私が産院で長女を出産して家に戻ると、生まれたての妹を見つめながら、息子がこうつぶやいたんです。『この赤ちゃんと僕は、ずっと昔から暗い宇宙に一緒にいたんだよ。次はここの家に生まれようねって相談して、最初に僕が行くことになったんだ』。ふだんは、そんな賢いことを言う子ではなかったから、度肝を抜かれてしまいました」
年端もゆかないころ、たびたび不可解な夢にうなされたという関西の女性(56)は、前世の記憶のフラッシュバックだったのではないかと、いまだに、こだわっている。
小学校に入る前、夢に現れたのは、いつも同じ場面だった。そこは、小窓がひとつだけある有蓋(ゆうがい)貨車の中で、彼女は、押し黙ったままの老若の女たちに取り囲まれている。貨車を連結した列車は、倉庫のような建物が立ち並ぶ敷地から出てゆこうとするが、アーチ形の門の手前で急停車して逆戻りする。そのとき彼女は、「もう出られないんだ」とあきらめ、無性に悲しくなって目覚めてしまうのだ。
このふたりの女性の体験を信じるか信じないかは、あなた次第。今回のアンケートでは、過去に自称能力者たちから前世を告げられたことがある人も少なからずいた。
「若かりしころ、占いに凝って前世も知りたくなった。占師に見立ててもらうと、中世ヨーロッパの貴族に仕えた侍女で、死後、シェークスピアのような男性の劇作家に転生したと言われた。当時、芝居の脚本の修業中だったので、まんまと真に受けてしまった」(東京、45歳女性)
人生は一度限り。だからこそ生きがいを実感できる――生まれ変わりを認めない多数派の言い分だ。
「生まれ変わりを妄信する人は、現世の不幸の原因を前世に求め、努力しない己の怠惰の言い訳に利用している」(香川、57歳男性)、「来世でやり直せるなら、挫折したとき、現世を精いっぱい生きようとすることを簡単にあきらめてしまいそう」(山口、49歳女性)と手厳しい。
でも、「かけがえのない大切な伴侶(はんりょ)とは、ともに転生を繰り返し、永遠に離ればなれになりたくない」(東京、55歳女性)という素朴な願望まで否定したくはないだろう。
遠藤周作がインドを訪れたのは、神の愛をテーマとした小説『深い河』の取材のためだった。主人公のひとり、ガンに侵された妻に先立たれた初老の男は、いまわの際の伴侶が、こんなうわ言を口走るのを聞いたため、やがてインドへ旅立つことになるのだ。「必ずこの世界のどこかに生まれ変わるから……探して」
孤独になるまで家庭を顧みなかった男は、生と死をのみこんで流れるガンジス川のほとりで、妻との縁(えにし)は生まれる前からあったように感じる。
妻の魂は滅びることなく、夫に寄り添っていた。
(保科龍朗)」