連日の仔猫達と大人猫達の捕獲の合間に、10日ほど前に保護した「エリザベス」さまの譲渡が決まり、譲渡先にお渡しして参りました。
「エリザベス」さまは、私が一年間ほど餌やりをしている場所に時折現れていた、前足を負傷していた老猫さんです。
ある晩、突然天界より、
「あの老猫を保護しなさい!」
と言われた気がし、いてもたってもいられず、洗濯ネットだけを持っていくと、他のベテラン餌やりさんが、
「あの子は絶対に逃げる、人に慣れない、野良そのもの、捕まらない」
と言われていたにもかかわらず、
「おいで」
というとすっと近づいてきて、難無く洗濯ネットにすっぽりと入ってくれて、脱力をして抱っこされたまま、保護したのでした。
そして連れて帰り、病院に連れていくと、左足の指先を鋭利な刃物で切断された跡があり、そのまま放置されていた為、固まってしまってはいましたが、もう何も治療もすることなく、健康状態も良好ということでした。
ただ、怪我をした時になのか、猫エイズには感染しているとうかがいました。
きっと精神疾患を持っているやからに虐待を受けたのでしょう。
そんな不運な経緯があるにもかかわらず、エリザベスさんは獣医さんにまでゴロゴロといってすり寄っていくような人間大好きな甘ちゃん猫ちゃんでした。
ベテラン餌やりさんは家には無理とおっしゃっていましたが、エリザベスさんは、今まで家猫としていたかのように人間の家の中はすべて分って慣れているようにふるまっていました。
そこに、他の仔猫の見学に来られたご家族のめいごさんが、エリザベスさんを見て、ひとめぼれをしてしまい「この情けない感じの顔が良い」とおっしゃり、その後、ご家族さま全員で来られて、全員、エリザベスさんのすべてを受け入れ納得してくださり、家族として迎え入れてくださることになりました。
そのお宅はなんと・・・
私のアパートの真裏の豪邸のご一家でした。
しかも・・・
3年以上前、そこにつながれっぱなしの老犬について、私が虐待ではないかと舞い上がってしまい、警察に通報したお宅だったのです。
その後、その白い柴犬ちゃんは亡くなったようでしたが、犬小屋がそのままあり、不思議だと思っていたお宅でした。
ワンちゃんがいなくなった後に、金魚のおけも置いてあったり、台所の戸口前にまるでぬいぐるみのような大きな可愛いシベリアンハスキ―が穏やかな瞳で通る人々を眺めていたり、ガラス越しに可愛い子猫が見え隠れしたりと毎日、そこを通る為に、いろいろと気になるお宅ではありました。
しかし、今回いろいろと誤解が解けました。
その白い柴犬ちゃんは大事にされていた子でしたが、どうしても家の中に入れようとすると窓から脱走してしまい、中にいるのを拒んでいたそうです。
何度も獣医さんに診せて良い健康状態を保っていたそうです。
そして18歳の誕生日を迎える前の晩に静かに息を引き取ったそうです。
実は、その犬小屋には近所のさくら猫が入るようになり、そこにフードもあげるようになっていたとのことでした。
3年前は私は突然、動物愛護の精神が急激に高まってしまった為に、周囲のどうぶつさん達のことに敏感になり過ぎて高揚していた時期であり、そこであの老犬が外につながれっぱなしであることを目撃してしまい、つい過激な行動に出てしまっていたのでした。
しかし、もしかしたら、その老犬さんが「エリザベス」さんの中に入り、もう少し大事にして欲しかった、と訴えてきているのだと思いました。
ご家族の皆さんも、エリザベスさんの中に、あの白いワンちゃんを感じ、罪滅ぼしのように大事にする、とおっしゃっているのでは、と感じておりました。
私も決意をして、そのお宅にエリザベスさんをゆだねることにいたしました。
訪ねてみると、皆、とっても明るく楽しい仲良し家族でいらっしゃいました。
シベリアンハスキーの女の子も純粋無垢の無邪気な子で、エリザベスさんの威嚇で、しゅんとなり、大人しくなってしまいました。
もう一匹の男の子の猫ちゃんも、エリザベスさんに敬意を示しているようでした。
エリザベスさんも一瞬にしてなぜか力を得て、若返ったように見受けられ、女王に君臨する勢いでした。
お名前は「キク」ちゃんになってしまいましたが、威厳がますます増したように見受けられました。
ご一家の女王として大事に大事にされ素晴らしい余生をお過ごしください!
祝!女王戴冠