猫活動をさせて頂いていて、至福の歓びを感じるのは、やはり旅立った猫ちゃん達が、素晴らしい里親さまのお宅で幸せそうに過ごしているご様子をうかがうことです。
ご報告のメールや可愛らしい猫ちゃん写真を送って頂いた時には、
ただただ、保護冥利に尽きるの一言です。
捕獲作業で楽な季節はありません。
春は突風で目が痛く、夏はこれでもかと蚊に喰われ、秋は、少しマシですが乾燥で肌がボロボロになり、冬はもう凍り付きそうになりながら・・・ふと、自分はここで何をしているのか、と意識が異次元に飛んで行ってしまうこともあります。
そして猫ちゃんが捕獲器に入ると、ふと我に返り、その気の毒な姿を目の当たりにすると罪悪感でいっぱいになります。
そんな時に「ごめんね、これが幸せへの第一歩だから」と声を掛けます。
その声に猫ちゃん達も反応し、少し安心した目をしてこちらを見つめて参ります。
こちらに保護している猫ちゃん達のほとんどが捕獲器で捕まえた子達ばかりです。
エンちゃんジェルちゃんも捕獲器で「ごよう!」となってこちらに参りました。
他の子達も皆、良い里親さまのところにもらわれて行き、あの惨めであったシンデレラが輝く王妃に変身するという、過程を見させて頂き、いつも感動を覚えます。
猫活動のラストにある、シンデレラデビューを見させて頂くことが、何よりのご褒美です。それまでに掛かった苦悶、苦行の時間が吹っ飛んでしまい、何事もなかったように思えて参ります。
その至福のご褒美があるからこそ、次の気の毒な猫ちゃん達も助けてあげたい、という活力にもなります。
保護猫ちゃん達を受け入れてくださる素晴らしい里親様方とは真反対に、猫活動にもれなく、ぶら下がってくる人間達の余りにも酷いこと・・・
また至福の歓びを頂く半面、その人間達に関わった時のやるせない思いや怒りの対処の仕方が、まだまだ試練と学びとして次から次へと襲って参ります。
先日も
「怪我をしている猫が来ているから捕獲器を持ってきて捕まえて欲しい」
という若い男性からの電話による依頼を受けて捕獲器を持って飛んでいき、寒空の下4,5時間待っていても一向にその猫ちゃんは現れず、そうしているうちに、依頼主の義理の父親という人物に出会い「毎朝餌を食べに来るから捕まえておいてやるよ」と偉そうに言って来られるので一任致しました。
その後、そこで何年も餌やりをしていらっしゃるボランティアさんにお話を伺うと、実はその一族は3代に渡って、外猫に残飯を与え続け、放ったらかしで、何十年もの間に、ものすごい程の数の猫を増やしてしまっていた、とのことです。仔猫は産みっぱなしで、産み過ぎて弱った母猫は床下で死んでいたり・・・と悲惨なところを見るに見かねた、ボランティアさんが、3年ほどかけ、数十匹の外猫ちゃん達に総額100万円ほども掛けてお一人で不妊去勢手術をしていたそうです。
その一家はそこで会社を経営し、ベンツをはじめ、4台もの車を持っているにもかかわらず、もし猫が捕まったら、病院への搬送をお願いできないかと、伺ってみると、一番酷い餌やりをしていた会社の社長と呼ばれるその人物は、
「猫なんか運べない、こっちは忙しいんだ」
と暖かそうな部屋で立派な椅子にふんぞり返って冷たいお返事をされます。
翌朝、怪我をした猫ちゃんを捕まえてはくれましたが、もうひとりのボランティアさんとたまたまお休みであったSさんがその猫を引き取りに行くと、
こちらは何も伺ってもいないにもかかわらず、
急に、
「金は出せない、出さないといけないんだったら保健所で殺処分してもらう」
と口汚く言い放ったそうです。
ボランティアさんとSさんがお近くの病院にその怪我をしていた猫ちゃんをお連れし、診て頂くと、人慣れしている捨て猫であったようで骨と皮ばかりに痩せこけ、歯もなく、エイズキャリアでもあり、そして何より、テリトリーに入ってしまった為に他の雄猫から襲われたと見えて、頭皮が剥け、神経までも見えているほど酷い状態であったそうです。
以下、ボランティアさのインスタグラムです。
ねこ結び(@rusuneko) • Instagram写真と動画
そんな気の毒な猫ちゃんを、その一族は見捨てました。
自分達が増やし、餌で猫をおびき寄せ続けていたにもかかわらず、最後の一言は
「こっちも猫の糞尿被害で困っていたんだ、なんとかしろ、それがそっちの仕事だろ」
でした。
呆れ果てて何も言えません。
来世はもううごめくものになることが決定致しました。
残飯を与え続けていた一族の一番高齢のおばあさまは、ひどい認知症にもかかわらず、一人暮らしをさせられているそうです。
もう地獄の沙汰の一家。
素晴らしいシンデレラストーリーに幸せをおすそ分けして頂いた分、どうしようもない苦悶の思いも頂きます。
これもバランスを取るためか、と思います。
天界と地獄界