そして、ちょっと前に、不思議な出来事がありました。
こちらからもらわれていった「エイト君」のご家族さまから夜遅くのメールで、
「主人がエイト君を抱っこして玄関に出たら、もがいて玄関から脱走してしまいました」
とありました。
顔面蒼白・・・
すぐに電話を掛けると奥様が申し訳なさそうに
「そうなのです。家族総出で探しています。主人はいじけて開き直っています・・・」
とあり、早速
「捕獲器を取りにきてください」
と申し上げると次の日に、奥様と長女さんとご主人の3人で捕獲器を取りに来られました。
ご主人は皆さんから責められ放題でいじけきっているご様子でした。
長女さんはエイト君が最初に来た時は、動物嫌いで避けていたけれども、エイト君の屈託のない明るく懐っこい性格にすっかりと魅了されて、今では一番の仲良しでいたそうです。
とても繊細な優しい方でエイト君がいなくなってから泣き通しであったそうです。
エイト君は、外にいる地域ネコさん達にとても興味があり、家の近くにネコさん達がそばを通ると喉を鳴らして喜んでいたということで、きっとお仲間が欲しかったのでしょう。
その日から、ご家族とエイト君との持久戦が始まりました。
地域猫さんがいるお宅に出入りしている姿を見掛け、そのお宅には絶対にエイト君には餌を与えないようにお願いしていただいたそうです。
それでもエイト君は空腹に耐えながらも、他のネコちゃん達に体をぶつけて仲間入りをお願いしていたそうです。
ご家族の精神的疲労と、エイト君の兵糧攻め作戦に、お互いがいつまで耐えられるかという戦いでした。
2日目が過ぎた頃、エイト君をかつて捕獲保護してくださった彩の国のMさんが、
「引き取って欲しいネコがいるんだけど」
とおっしゃって参りました。
これはエイト君が呼んだのでは、と感じておりました。
そしてそのお話が来てすぐに、エイト君は奥様の同僚の方が準備してくださったマグロを焼いた餌にまんまと引っかかり、御用!となったそうです。
エイト君が捕まったその日に、彩の国のMさんが、問題のキジトラネコちゃんを連れて来られたのでした。
その子は外に捨てられていた女の子で、異常なくらいに人懐っこくて、誰にでもくっついて付いて行ってしまうため、危ないので保護したい、とおっしゃるのでした。
こちらに来てもらったキジトラネコちゃんは、うかがっていた通りの異常なくらいの懐っこさで、人間にくっついていないと狂ったように泣き叫ぶ子でした。
抱っこするとゴロゴロゴロゴロと喉を鳴らし、驚くほど甘えてくるのでした。
捨てられた時の恐怖心の為に、分離不安症になってしまったと思われます。
しかし、こんなに優しく可愛い子を捨てるという人間の心が信じられません。
エイト君の脱走と捕獲、エイト君の生まれ故郷で、エイト君とほぼ同じ歳のネコちゃんは、ご縁があるとしか思えませんでした。
そこで、エイト君のご家族さまに、
「エイト君はネコ仲間が必要のようです。ちょうど来たこの子はいかがでしょう?」
と提案してみると、早速、捕獲器を返しがてら、ご家族さま5人さま総出でお越しになったのでした。
私は、脱走させてしまったご主人さまが、その子を必要としている気がしておりました。
そして案の定、ご家族さまは「エメラルドちゃん」(瞳がエメラルド色であったので命名)をものすごく可愛いと思ってくださり、即答で「家族にしたい」とおっしゃってくださいました。
エイト君が起した奇跡です。
ネコが脱走する時は、必ず意味があるといつも感じます。
エイト君は自らが脱走することによって、ご家族さまがエイト君をどれほど大事に思っていたかを再認識させ、家族の団結を強化し、そして可哀そうな捨てネコの同胞を救ったのでした。
エメラルドちゃんは、エイト君とそろえる為に、「ナナちゃん」となったそうです。