jupes jupesの日記

Lanai Fukudaのくだらない日々

天界に戻った男爵君

昨日、8月14日未明、男爵君が天界の天使になりました。

 

家ネコとして部屋の中でひなたぼっこすることは叶いませんでしたが、エデンの園の花園で光を浴びているひげの生えた威厳に満ちた男爵君のお姿が見えます。

 

 

昨日は朝からシェルターに出掛けようとすると、続けざまに電話着信があり、そしてひとつの電話が長く、そして更に、以前かかわった親子ネコちゃんの「ママネコ・まあこちゃん」の脱走事件の呼び出しまであり、なかなか部屋にたどり着けなかったのです。

 

ようやく部屋を開けてすぐに男爵君のケージを見ると、トイレの中で固まっている男爵君を発見致しました。

 

もうすでに硬直が始まっており、早朝に息を引き取ったと思われます。

 

私に苦しい最期を見せないように配慮したような男爵君の立派なお姿でした。

 

そして、最後の力を振り絞ってトイレに入り、たくさんおしっこをしていた跡がありました。

 

前日は、新しいネコハウスのはじっこで大量にうんちゃんをしてしまっており、仕方なくハウスから段ボールに男爵君を移し替えておりました。

 

新しいものは好かない、という男爵君らしく、最期は段ボールの中でこと切れたようです。

 

まるで、看取りを拒否し、清貧の誓いを貫いたような、最期の最期まで威厳を保った男爵君らしいお姿でした。

 

 

うちの父も最期の最期まで自らの力でトイレに行き、絶対におむつをせずに逝ったのでした。

 

2者が、武士道、のような、なんとなく通じるものを感じます。

 

男爵君は、6年前、ある餌やりさんの代わりに、公園で餌やりを始めた時から、出会った方でした。

 

最初の頃は大柄で美しい白黒タキシード柄の毛並みで、「男爵」とつい声に出て呼んでしまったほどの、ご立派なネコさまでした。

 

他にもたくさんネコさん達がいたのですが、男爵君はなぜか皆から敬遠されて、一匹で孤立しており、寂しそうにしておりました。

 

しかし、フードを置くと必死で美味しいところをかぶりつき、私が移動をすると、先回りして待っており、そしてまた美味しいところだけを頂くという、なかなかしたたかな、生き強い方でした。

 

そんな生き強い方が、ここ数年で急に目やにが酷くなり、それに伴って、私もいろいろと研究し、男爵君の目やにを治すためのあらゆるサプリメントを用意して与えておりました。

 

そのおかげか、目やには少し良くなったと思ったら、今度はよだれを垂らしはじめ、これはネコエイズかも知れない、なんとか捕獲保護して病院に連れて行ってあげたい、と願い、1年前から、捕獲器をあちらこちらに置き、それでも入らないため、洗濯ネットでの捕獲も試み、それもすり抜けられてしまった為に、大きなゴミ箱を置き、横にステンレスの網を置いておき、餌で誘導して入ったら、ふたを閉めるという作戦を考えて用意しておりました。

 

それでも半年かかってもうまくいかず、そのうち男爵君は姿を消してしまい、どこかで亡くなっているかも知れないと思っておりました。

 

するとご近所で優しい方が庭に男爵君は毎日来て、ネコミルクやちゅーるを何杯もお替りしているとうかがい、ほっとしておりました。

 

私も男爵のことを毎晩天界に祈り、無事に痛みなく上の世界に戻れますように、と祈り続けていたのでした。

 

それが先週、突然、これまで現れなかった場所に、男爵が現れ、ご近所の方々を、その悲惨な姿で驚かせ、私に捕獲の依頼の電話が来たのでした。

 

そして先日、書いていた通り、奇跡的に、公園に置いてあったゴミ箱によって男爵を遂に捕まえることができたのでした。

 

しかし、そのあと、捕まったら保護してくださると約束をしていた方が、急に拒絶をされ、

「うちは絶対に引き取らない、外に出して!」

とおっしゃり、息子様の必死の頼みにも

「ダメったらダメ!」

とヒステリックに叫び出してしまい、その哀しい言葉を男爵には聞かせたくなく、こちらで引き取ることになったのでした。

 

4日間ほど、ご近所にある最初にあのホワイト・イーグル君が入院していたしみず動物病院さんに偶然にも、引き受けて頂き、入院してもらいました。

 

そこでは2人の獣医さんが手厚く診てくださり、野良ネコ扱いではなく、家ネコのように大事にしてくださったのでした。

 

そして退院後は、すでに満室のこちらのシェルターのケージで保護することとなったのでした。

 

SNSでは「野生に返した方が良い」という厳しいコメントも頂きました。

 

しかし、自己満足と言われてもなんでも、行き倒れのお爺ちゃんを外に放り出す気持ちにはなれませんでした。

 

 

しばらく他のネコちゃん達は、男爵君をかなり警戒し、ぴたっと食欲がなくなってしまい、皆フードに口をつけなくなってしまいました。

 

野性の臭いを発している男爵君のことを皆、恐れていた様子だったのです。

 

ちょっと困ったと思いながらも、男爵君と皆に声を掛け、なんとか仲良く穏やかに、と願っておりました。

 

男爵君は、退院後、病院で購入した高価なAD缶とミルクを一生懸命食べて、生きようとしていたようでした。

 

しかし、相変わらず、私が触ろうとすると「しゃー」と声を発し、威厳ある態度を変えようとはしませんでした。

 

皮肉にも亡くなったあとは十分に頭をなでてあげることができました。

 

そしてご近所では何軒ものお宅でお世話になり、フードももらっていたにもかかわらず、最期は私の元に帰って来てくれたことを感謝しております。

 

あまりにも汚れてみじめで臭気をまき散らしている男爵に恐れをなして、どなたも最期は近寄ろうともせず、保護を拒否された男爵君でした。

 

天界は、この世で一番醜くみじめで汚いものの中にキリストが宿っている、とおしゃっております。

 

最期の数日間、しゃーとは言ってはいたものの、男爵君のグリーンの瞳を見つめていると、奥にキリストの優しく慈愛に満ちた目が垣間見えておりました。

 

昨晩、餌やりの最中、雨上がりの夕空をふと見上げると、厚い雲から一筋の光が上に向かって伸びているのを見て、男爵君が私にお礼を言いながら、天界に昇って行かれた、と感じました。

 

男爵君の魂が抜けた亡骸は、昨晩の台風の大雨の中、男爵君の願いを聞き入れ、私と男爵君だけが知っているシークレットガーデンに密かにそっと埋葬致しました。

 

私にお世話する機会を与えてくださり有難うございます。

 

多くの人の中から、私目を選んでくださり感謝申し上げます。

 

男爵殿

 

(この文章を打っている間に「まおこちゃんが戻ってきた!」というお知らせがきました!)

 

威厳に満ちた男爵君

有難う、男爵君