昨夜から朝方に掛けて濃い夜霧の中、捕獲作業をひとりで行っておりました。
11月とも思えない程、ねっとりと暑い夜で霧と汗が入り混じりまるで熱帯雨林にいるかミストシャワーを浴びているような状態になっておりました。
おまけに蚊やダニまで出現し、何か起きるような嫌な予感がしておりました。
その地域はいわくつきの危険ゾーンで、何十年も住人の方々がある女性の為に息をひそめて暮らさなければならない場所であったのです。
まるで墓場の鬼婆のようなお方が棲む場所で、その方が暴れ出すともう誰も手が付けられないそうで、警察も何度も出動してきたそうです。
その鬼婆さんに遭遇してしまったのでした。
その老婦人は自宅で出入り自由な猫を数十匹も半野良飼いをし、近隣住民に迷惑を掛けっ放しであるだけでなく、猫が帰って来ないとお隣の方が殺したんではと疑いを掛けて怒鳴り込んでくる方であるそうです。
そのことを皆さんから伺い忠告を受けていた為に、絶対に見つからないように深夜こっそりとひっそりとひとりで息をひそめるように捕獲作業をしていたのです。
しかし、どうしてもその方の家の近くに行かないと、その方の猫をおびき寄せられなく、そっと近づいてしまったのでした。まるでヘンゼルとグレーテルがお菓子の家におびき寄せられたかのように、つい霧の魔力に負けてしまいました。
そのおかげですぐに一匹の茶色猫を捕獲でき、次を、と狙っているとドアのかちゃっという音がしたために、慌てて捕獲器を置いたままその場を去りました。しばらくして、戻ってみると、なんと捕獲器が消えていたのです。
これはまずい・・・と思い、もうどうにでもなれと思い、その方の玄関のチャイムを鳴らしました。しかし、何度鳴らしてもまったく反応がありません。
天界よ・・・と唱えていると、黒檀のような霧の中に突如、うっすらと顔を出し始めた朝日の後光を浴びながら「こりゃ~うりゃ~!」と毛髪を逆立てて走ってくる鬼婆の姿がありました。
「こりゃーおまえ~!なにをする~!」
そして私の捕獲器を玄関の中に放り込み「返して欲しけりゃ警察を呼べ~!弁護士を呼べ~!」としんと静かな早朝に鬼婆の言葉があたり一帯に響き渡りました。
あとはひたすら興奮して叫び続ける鬼婆のお言葉をただ冷たい気持ちで聞いておりました。
とにかく支離滅裂なことをおっしゃいます。そして「土下座して謝れ~!」とおっしゃるので、土下座して謝る振りを致しました。
こういう方にはどんな理屈も通用しません。ただひたすらうなずき謝るに限ります。
こちらはとにかく捕獲器を返して欲しいと思いました。
しかし、鬼婆さんのお言葉の中には、いくつか同感できるものもありました。
「人間は傲慢すぎる!猫は自然で良いんだ!人間が去勢されろ!人間が増えるのがおかしい!」
私は思わず、そうですよね。その通りだと思います。と同意し、自分も外猫に毎晩餌をあげに行っているとか、外猫をたくさん保護して里親を探している、という話をすると徐々に鬼婆さんの態度が軟化し、「あんたも愛護家?だったらそう言ってよ!」と柔らかい口調に変わり、その後は延々と人間や環境への不満を口にし始めました。
ただ、その最中に「今、声がこういった」「聞こえる?こう言ったでしょ?」とおっしゃり、幻聴の傾向有りと見えました。
すかさず「神様の声が聞こえるのですか?」と聞くと「違う人の声がいろいろと教えてくれる。今、白い猫がいなくなったと聞こえた」などとおっしゃいます。
ご近所の方々はこの方が何度も精神病院に入院されていたとおっしゃっておりました。大いに統合失調症の疑いがあります。それも良くない統合失調症で、死霊や宇宙界の存在、うごめくものの言葉が聞こえてしまう方で、人を責める傾向の統合失調症です。
ちょっとだけ、天界のヒーリングをそっとしながら、ひたすら鬼婆さんのお話を傾聴しておりました。
30分後くらいに、その方はふっと真顔になり、「有難う、あんたも頑張ってね。でも私のペットは捕まえちゃダメ!ここはダメ!」と言って捕獲器を謝りながら返してくださいました。
事なきを得ましたが、まだまだ、あと10数匹はここで捕獲する必要があります。
天界に願いながら、次回は本当に気を付けながら作業をしようと心に留めました。
すべては猫の為です。
その鬼婆さんは、一番安い餌だけあげ続け、その猫達が子を産もうが、いなくなろうが、交通事故で轢かれようが、病気になろうが、カラスに突かれようが、それは自然の摂理であって、どうでも良いとおっしゃいます。それは江戸時代か明治時代くらいであったら通じる道理かも知れません。現代の日本の環境の中でその身勝手な主張を通そうとするのがかなり傲慢な姿勢であると思います。
なんとも勝手な愛護家さまです。
今年は本当に猫活動を通していろんな人種に遭遇します。
あともうちょっと・・・淡々と粛々と試練を乗り切ろうと思います。