jupes jupesの日記

Lanai Fukudaのくだらない日々

クリスマス・イヴの奇跡


昨晩、悲願であった駅前の白ちゃんの保護に成功致しました。

 

最近、竹林の中のしげみに潜んでいて元気がなさそうに見え、いつか保護してあげたいと願っておりました。

 

この日は、天界から「今日ならできる保護しなさい」と言われた気がしたのです。

 

いつもなら近寄ってもこない、つれないクールな白ちゃんがふと近づいてきたところを、用意していた洗濯ネットを広げて、首根っこを摑まえると脱力をした白ちゃんを抱きかかえ、そのまま洗濯ネットに包み、自転車で家まで連れて帰ってきてしまいました。

 

気難しい白ちゃんを、皆さん保護しようと何年もトライしてきたそうなのですが、どなたも捕まえることができない、と言われ続けてきた白ちゃんの保護です。

 

クリスマス・イヴの奇跡としか思えません。

 

 

 

白ちゃんと出会ったのは2年以上前でした。

 

ある日、地元の駅を降りた時に、今までもずっと利用していた駅であったのに、なぜこれまで気が付かなかったのか、改札口のすぐ近くのアパートのコンクリートの上に真っ白い丸いものがちょこんと座って静かにたたずんでいる様子に驚きを覚えました。

 

汚れて朽ち果てそうな古い建物の前に、純白の光に反射する真珠のような毛足の長い毛皮をまとった神々しい姿は、退廃的なもののと、真反対な清らかな美、という対比の強烈なインパクトがありました。

 

白ちゃんに魅了されてしまった私はその日から、毎晩、誘われるようい白ちゃんにフードを献上することとなったのです。

 

そこで白ちゃんに関して多くの情報を得ることができました。

 

実は、白ちゃんは10数年前に駅で捨てられた子であるという噂。

 

数回出産をし、たくさん子を産んでしまっていた。

 

白ちゃんに魅了され、インスピレーションを受けた多くの芸術家たちがいること。

 

作詞家の方は、「白ちゃんの歌」を作りCDまで販売していたこと。

 

絵本作家の方は「白ちゃん物語」を書き上げて絵本を出版していたこと。

 

白ちゃんのファンになった人々は、遠くに住んでいても、わざわざ数時間かけて会いにくるということ。

 

朝から晩までその駅を使う数百人もの人々は皆白ちゃんに挨拶をし、白ちゃんに会えると幸運をもらえるという年伝説まであるということ。

 

白ちゃんのファンクラブが結成されており、時々、ファンミーティングがあること。

 

精神的に病んでしまった方が、白ちゃんに会いにきて撫でることで、とても癒されるという噂が流れ、時間差で数人のいかにも心を病んでいるような方々が順番待ちで白ちゃんを撫でに来ているということ。

 

 観察をしていると、白ちゃんは明らかに何か心身を病んでいるような問題がありそうな方だけに、特別すり寄って行き、全身でその人にまとわりつき、苦しみを吸い取ってあげているように見えました。

 

元気そうで問題のない人にはとてもそっけないそぶりを見せ、参拝者に献上される高級そうで美味しそうなフードの表面にちょっとだけ口をつけると、「気に食わない!」と言わんばかりに顔を上げると、さっさと後ろ足で地面を蹴り上げ逃げていきます。

 

それとは反対に具合の悪そうな人が持ってくる、あまり高そうでないドライフードを美味しそうに食べるそぶりを見せ、お礼を言うように、その人に、何度も何度も頭を摺り寄せて、そして癒しているようにみえました。

 

しかし、そんな白ちゃんもよく見ていると夏は白い耳が蚊に喰われて流血し、掻きむしって耳の形が変形し、ピンクの鼻も腫れあがっていることがよくありました。

 

真っ白い毛皮は、長年の泥汚れで、グレーと化して足も真っ黒でした。 

 

また耳ダニも酷い様子で、ピンクの耳の中が黒い汚れが詰まっていました。

 

そして両目からはいつも涙が流れており、それが固まって目の下の皮膚もただれていました。

 

そんな白ちゃんには、ファンがいくらいても、どなたも、白ちゃんに薬を塗ってあげるとか、病院に連れていってあげようとするとか、そんな気をまわせる人はいないようでした。

 

いわば、白ちゃんを猫ではなく、勝手に神格化し、白ちゃんに癒され、都合よく利用しているようにも見えました。

 

白ちゃんはいつも竹林の中に潜み、時々、竹の枝の上に飛び乗って高いところから下の線路の脇道を通る人達を見下ろしています。

 

そこには使用していない物置が置いてあり、さび付いた扉は鍵が掛けてあり、その換気扇の穴から、白ちゃんは出入りをし、冬の寒い時には中に入り暖を取っているようでした。

 

気の毒に思ったどなたかが、アパートの階段下に段ボールハウスを作り、そこに暖かそうな毛布などを置いて、白ちゃんハウスを作ってくださっていました。

 

しかし、意地の悪い猫嫌いな方は、ハウスにごみを放り込んだり、フードの容器を捨ててしまったり、また酔っ払いが乱暴な言葉を吐いたり、フードの上に○○ションを掛けたりしているのも見掛けておりました。

 

そして、年々、白ちゃんは歳をとっており、今年の冬は越せるだろうか、というような噂もよく耳にしておりました。

 

ただ、時々、水路から上がってくるミニミニのネズミを素早く捕まえている姿を見ると、まだ健在かな、とほっと安堵していたものでした。

 

そんな白ちゃんを毎日見ていて、いつかは、白ちゃんを保護してあげたい願うようになっておりました。

 

そしてある時、

 

「白ちゃんの里親さまになってください」

 

というポスターを貼り、募集をかけてみたのでした。

 

すると数人の方からお問合せがありました。

 

しかし、本格的に保護しましょうか、という段階になると急に皆さんは躊躇し始めるのです。

 

「自分にあの人気者でカリスマ性のある白ちゃんを引き受けられるだろうか」、

「野良ちゃんで自由にいた方が白ちゃんにとって幸せなのではないか」、

「自分が皆の人気者である白ちゃんを引き受けるには畏れ多い」、

「皆のアイドルを独り占めしてはいけないのでは」

 

などと、いう思いが最終的に沸き起こってくるようで、お問合せがあったものの、結局どなたからも、引き受けたいというお答えはありませんでした。

 

かくいう私も、自分ごとき人間が白ちゃんのようなカリスマ人気者を連れて帰っては、畏れ多いこと、分に能わずという気持ちがあり、躊躇してしまっておりました。

 

しかし、クリスマス・イブの夜だけは、なんとなく、不思議に捕まえられる気がして結構したのでした。

 

続く・・・

 

 

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Merry  Merry Christmas!