jupes jupesの日記

Lanai Fukudaのくだらない日々

ハリガネムシ



先日、実家に帰っている時、ラジオから「NHK夏休みこども科学電話相談室」なる番組が掛かっておりました。

あどけなく幼い声の子ども達が結構鋭く自然界のことを観察し、疑問に思ったことを自然科学の専門の研究者の先生方が分かり易く真剣に答えてくださっています。

とても勉強になり、もう一度小学生に戻って勉強し直したい気持ちになります。

夏休みの間は、「草木、鳥、昆虫、天文学」などの専門分野が特集になるようです。

目からうろこのような新鮮な内容ばかりでとても勉強になります。

幼少時代とはは皆、自然科学の研究者達ばかりだと感心致します。

その日、第一弾の質問を何気なく聞いていて、私は恐怖の戦慄が走りました。

たぶん、以前にも聞いたことがある生物の話でしたが、改めて知るとなんとなんと恐ろしい・・・

あどけない可愛らしい声の主のその少年がある生物の驚愕の事件を目撃し、その疑惑について訊いていたのでした。

少々うろおぼえなのですが、「その少年はある日、カマキリを発見した。そのカマキリは本来なら行かないはずの水辺に近づき、ふらふらと水の中に入っていった。すると突然、カマキリのお腹が割れてそこからもぞもぞとおぞましい姿のハリガネムシなる針金状のものが出てきた。これはいったいどういう現象なのか?」という質問でした。

それを昆虫の専門の先生がだいたい以下のようにお答えしておりました。

ハリガネムシというのは、昆虫ではない、針金のように細い姿の水中生物である。それは水の中に生息しているが、大人になって陸に上がるとカマキリなどの昆虫に食べられるように仕組まれている。その大人はメスでお腹には卵を持っており、カマキリに食べられるとその卵は、カマキリのお腹の中で孵化していく。その子達は、ゆっくりとカマキリの栄養素を頂きながら成長し、そして脳の中にまで入っていき、洗脳し、水辺に行くように仕向ける。その洗脳の仕方はまるで魔法を掛けるようにするのだ。そして最期はカマキリはもうろうとして、水の中に入っていくと、お腹の中の子たちは、その水の匂いを嗅ぎ取った瞬間にカマキリのお腹を引き裂いて、水の中にいっせいに針金のような姿となって泳ぎ出て行く。しかしこの生態はまだはっきりとは解明されてはいない」

というような内容をゆっくりとかみ砕いて分かり易く優しく説明してくださっておりました。

その先生の優しい声と質問者の少年のあどけない声の対話が、可愛らしく素敵であればあるほど、その悪魔の生物の生態話のギャップで、夏のさわやかであるはずの朝を一瞬の内に台風前のような暗雲が立ち込めるような蒸し暑い重い空気圧へと変化させてくれたのでした。

私は、その幼い少年が、その事件を目撃してしまったことで、将来へのトラウマになってしまうのでは、とちょっと案じてしまいました。

しかし、よく考えてみると、そのような寄生動物の生態のようなことは、この人間界ではしょっちゅう起きていることであり、その少年は大人になるまでの心の準備として、そのハリガネムシをみたことで大いに勉強になったのではないかということです。

ハリガネムシのような行為は、人間界ではとても賢い戦略です。

たとえば、弱い立場の人間が、強い者に負けてその組織の中に取り込まれたという振りをして、その組織の中でゆっくりと実力をつけていき、その強い者達に油断をさせておき、自分が十分実力を身に着け、その強い者達の組織がだんだん弱っていった頃を見計らって、突然、恐ろしく強い本性を現し、態度をひるがえして裏切り、その強かった者たちの組織を奪いとってしまう。

とか、

またはある弱い国のスパイが、変装して強い国に入っていき、何食わぬ顔で過ごし、ある重要人物と仲良くなり、その人からすべての情報を手に入れた時、その人を巧みな言葉で誘って自分の国におびき寄せてから、突然、豹変し、本性を現し、その重要人物を人質に取って、その強い国を脅し、すべてを奪おうとする・・・

とか、また敬愛する徳川家康公の半生は、まさに「ハリガネムシ戦略」をし続けていた方と想像されます。

幼少期に今川家に人質となり、お家をつぶされてしまった後、力のない振りをし続け、今川家では美味しいものを食べさせて頂き、武術をおすわり、教養を身に着けさせてもらい、元服式まで立派にさせてもらい、井伊家とゆかりのあった築山御前という両家の姫と結婚までさせてもらい、そして子を多く設け、十分、今川家の恩恵を受けたにもかかわらず、今川家が弱まってきたら反旗を翻し、全滅に追いやってしまい、その内に、妻も息子も、織田家に謀反を疑われたという理由で刃に掛けてしまうという残虐ぶりを発揮しておりました。日本の基礎を造る必要があった為に、それは仕方のなかったことでしょう。人はそれを悪魔のようだ!ハリガネムシのようだ!とは批判せずに、非常に賢い戦略だ!と絶賛致します。

この地球は人間ほど悪魔な生物はいないでしょう。

あの少年は、ハリガネムシから良い学びを得ておいて良かったと思います。